【税金】不動産売却でかかる税金とは?具体例や節税のコツも解説!
「不動産の売却では大きな金額が動くし、税金ってどれくらいかかる?」
自宅の売却など、不動産の売買についてこういった疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
心配に思う方も多いと思います。
不動産売却に伴う税金で最も注意したいのが、売却で生じた「利益」に課税される「譲渡所得税・住民税」です。
簡単にいうと、買った時よりも高く売れた時などに、税金がかかります。
詳しい計算方法などは、後ほど紹介します。
【不動産売却益にかかる税金のポイント】
- 売却利益(譲渡しょとく)が3,000万円以下の場合は、税金の特例を適用できれば税金はかからない
- 利益が3,000万円より高く売れた場合は、売却益から特例分の3,000万円を引いた額に対して税金がかかる
- 取得費など、売却の必要経費を売却益から引くことができる
- 所有していた家の年数に応じて税率が変わる
※所有期間が5年以下なら約39%、5年超なら約20% - 所得税のほかに「印紙税」「登録免許税」「消費税」もかかる
この記事では、
- 不動産の売却にかかる税金の種類
- 譲渡所得税のシミュレーション
- 節税のため3つのコツ
など、不動産の売却に関連する税金計算のノウハウをわかりやすく解説していきます。
ぜひ最後までご覧いただき、不動産を売却する際に余計な税金を払わないで済むように対策していただければと思います。
〈目次〉
不動産売却でかかる税金:5つの種類
不動産の売却で発生する可能性がある税金は、次のとおりです。
税金の種類 | 税率・税額 |
所得税・住民税 (復興特別所得税含む) |
所有期間5年以下:39.63%
所有期間5年超:20.315% ※10年超所有するマイホームなら、14.21%(利益のうち6,000万円まで) ※譲渡所得(売却の利益)に課税される。売却の翌年に支払う) |
印紙税 | 売買代金に応じて決まる
(例)
※売買契約書に貼り付け |
登録免許税 (抵当権抹消登記) |
土地1筆・建物1棟あたり1,000円
※住宅ローンを利用していた場合に必要 |
消費税 | 10%
※仲介手数料・司法書士報酬等にかかる |
不動産を売却するときに、一番注意したいのが、利益に課税される「所得税・住民税・復興特別所得税」です。
その他の税金については比較的少額で、仲介してくれる不動産会社から支払いのタイミングについても説明があるので、あまり心配はいりません。
それでは、それぞれの税金の詳細を説明していきます。
所得税と住民税
不動産が買ったときよりも高く売れて、利益が出た場合などに課税される税金です。
仲介手数料などの諸費用を差し引いた「純粋な利益」に課税されるとイメージしてください。
「所得税」「住民税」「復興特別所得税」を合わせた税率は、不動産を所有していた期間が5年以下の年に売れたら約39.63%、5年を超えた翌年以降に売れたら20.315%です。
所得税 | 住民税 | 復興特別 所得税 |
合計 | |
長期譲渡所得 |
15% | 5% | 0.315% | 20.315% |
短期譲渡所得 (5年以内) |
30% | 9% | 0.63% | 39.63% |
「こんな税金かかるの?」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、マイホームを売却した場合には、利益が3,000万円まで非課税になる制度があります。(居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例)
特例を適用するためには要件がありますが、一般的なマイホームの売却では課税される人は少ないので安心してください。
3,000万円の特別控除の主な要件
- 自分が住んでいた家を売ること
(別荘や投資用マンションは対象外) - 以前に住んでいた家屋や敷地等の場合は、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること。
- 売った年の前年、前々年にこの特例を受けていないこと
- 売却の相手方が親子や夫婦等でないこと
など
その他詳しくは国税庁ホームページをご覧ください。
(国税庁「マイホームを売った時の特例」)
印紙税
不動産の売買契約書に印紙を貼って納税します。
税額は次のとおりです。
(引用:国税庁「不動産売買契約書の印紙税の軽減措置」)
登録免許税
売却する不動産について、住宅ローンを借入していた場合には、金融機関が「抵当権(ていとうけん)」を設定しています。
抵当権とは、お金を貸す銀行などの金融機関が、借りる人の家や土地をその借金の担保とするために設定する権利のことです。
売却時には抵当権の抹消登記が必要となるため、登録免許税を支払います。
税額は、土地・建物それぞれの個数×1,000円なので、登録免許税は数千円で済むことがほとんどです。
例えば、一戸建てなら土地・建物を合わせて少なくとも2,000円で、土地が2筆以上に分かれていれば登録免許税は増えます。
なお、所有権移転登記にも登録免許税がかかりますが、こちらは買主負担となるのが一般的です。
消費税
不動産を売却するときには、仲介手数料や司法書士報酬に消費税がかかります。
2019年10月に消費税が増税となりましたが、個人がマイホーム等を売却するときには増税の影響はあまり大きくありません。
例えば、売買代金が3,000万円の場合の仲介手数料の上限は、
96万円(3,000万円×3%+6万円)
ですので、消費税10%なら96,000円です。
なお、課税事業者になっている不動産投資家が事業用の不動産を売却したときには、建物部分について消費税が課税されます。
(2年前の売り上げが1,000万円を超える場合は課税事業者になります)
不動産売却で発生する「譲渡所得税・住民税」の計算方法
不動産売却で発生する税金に、「譲渡所得税・住民税」があります。
3,000万円の特別控除を利用する方、しない方に向けて計算式を紹介しますので、参考にしてください。
通常の計算式
それでは、「譲渡所得税・住民税(「復興特別所得税」含む)」を試算していきます。(わかりやすくするため、減価償却費などは省略して簡略化しています)
【通常の計算式】
(売った値段−買った値段−諸費用)×税率
買った値段がわからない人は「買った値段」のところに、「売却価格×5%」の数字を入れます。
購入した値段が「売却価格×5%」より少ない時にも、5%の数字を採用できます。
ちなみに諸費用は、売るときの費用と、買った時の費用を計上できます。
(諸費用例)
- 仲介手数料
- 印紙代
- 登録免許税
- 登記費用
- 取り壊し費用
- 測量費用
など
3,000万円の特別控除を利用する場合
3,000万円の特別控除を利用する場合は以下の通りになります。
「3,000万円の特別控除」を利用する人
(売った値段−買った値段−諸費用−3,000万円)×税率
税率の表
税金の計算を行うときには以下をご活用ください。
所有期間 | 「譲渡所得税・住民税・復興特別所得税」を合計した税率 |
5年以下 (短期譲渡所得) |
39.63% |
5年超 (長期譲渡所得) |
20.315% |
10年超の マイホーム |
14.21%(利益のうち6,000万円まで) 20.315%(利益のうち6,000万円超の部分) |
※注意点※
- 所有期間は、売却した年の1月1日時点で数える
- 原則として引渡し日で考えますが、契約日を採用できる場合も有り
- 相続した不動産の場合、亡くなった人が取得した日から計算するのが原則
- 判断に迷う場合には税務署に相談
- 所有期間が10年超の「マイホームの軽減税率の特例」を適用するためには、一定の要件があります。詳しくは下記国税庁のサイトをご覧ください。
国税庁「マイホームを売った時の軽減税率の特例」
不動産売却の税金シミュレーション
不動産売却時の税金計算について、3つのシミュレーション例をご紹介します。
あなたの不動産売却シミュレーション時の参考にしていただけたらと思います。
2,000万円で購入した土地を2,500万円で売却したケース
1つ目のシミュレーションは、2,000万円で購入した土地を2,500万円で売却したケースです。
売却物件の所有期間は4年、諸費用は250万円を前提としての計算です。
〈譲渡所得税・住民税(復興特別所得税含む)の計算式〉
(売却価格−購入価格−諸費用)×税率(39.63%)
=(2,500万円−2,000万円−250万円)×39.63%
=約99万円
2,000万円で購入したマイホームを2,500万円で売却したケース
2つ目のシミュレーションは、2,000万円で購入したマイホームを2,500万円で売却したケースです。
物件の所有期間は7年、諸費用は250万円として「3,000万円の特別控除」が使える場合のシミュレーションです。
〈(売却価格−購入価格−諸費用−特別控除)を計算〉
(2,500万円−2,000万円−250万円−3,000万円)
=−2,750万円
計算を行うと答えがマイナスとなります。
マイナスの場合は所得が「0」になるため、税率をかけても0円となります。
購入額不明のマイホームを4,000万円で売却したケース
3つ目のシミュレーションは、買った値段がわからないマイホームを4,000万円で売却したケースです。
所有期間は9年、諸費用は150万円として「3,000万円の特別控除」が使えるものとします。
今回は、取得費がわからないことが計算のポイントです。
不動産を手に入れた時の資料がなく、購入金額が不明な場合、売却額の5%相当を取得費として計算できるルールがあるので利用しましょう。
購入時の値段が不明なため、購入額4,000万円×5% = 200万円で取得したものと仮定して計算を行います。
〈譲渡所得税・住民税の計算式〉
(売却価格 – 購入価格 – 諸費用 – 特別控除)×5年超(長期譲渡所得の税率20.315%)
=(4,000万円-200万円-150万円-3,000万円)×20.315%
=約132万円
参考:国税庁「取得費がわからないとき」
減価償却の計算方法
より正確な税金を算出したい場合は、減価償却も含めて計算する必要があります。
計算例では省略しましたが、建物を売却した場合には「買った値段」の計算で「減価償却費」を差し引きます。
こちらでは、減価償却費の計算方法を紹介します。
買った値段=購入代金−減価償却費
減価償却は、所有期間中に建物の価値が少しずつ減っていくという考え方です。
土地の場合は減価償却しません。
また、買った値段が不明で、売却価格×5%で計算した場合には減価償却は行いません。
居住用の場合の減価償却費の計算式は、次のとおりです。
減価償却費=建物の取得価格×0.9×償却率×経過年数
償却率は建物の構造によって異なります。
構造 | 償却率 |
木造 | 0.031 |
軽量鉄骨(3mm以下) | 0.036 |
軽量鉄骨(3mm超、4mm以下) | 0.025 |
鉄筋コンクリート、鉄骨鉄筋コンクリート | 0.015 |
参考:国税庁「減価償却費」の計算について
【例】取得価格3,000万円(このうち建物価格2,000万円とする)のマンションを3,200万円で売却した場合。
〈諸条件〉
- 諸費用:300万円
- 構造:鉄筋コンクリート
- 所有期間:6年
- 用途:マイホーム
- 「3,000万円の特別控除」を使わないものとする
減価償却費=建物の取得価格×0.9×償却率×経過年数
=2,000万円×0.9×0.015×6年=162万円
譲渡所得税・住民税(「復興特別所得税」含む)
={(売った値段-(購入代金-減価償却費)-諸費用}×20.315%
=(3,200万円-3,000万円+162万円-300万円)×20.315%
=約12万円
なお、事業用の不動産の場合は、建物を取得してから売るまでの毎年の減価償却費の合計額を差し引きます。
節税のための3つのコツ
不動産売却で節税するには、物件購入時の購入金額、所有年数による売却のタイミング、節税できる制度を知ることは大切です。節税するための3つのコツをご紹介します。
購入額がわかる書類を探す
購入代金がわからない場合は、売却代金の5%で取得したものとして計算することになります。
この場合、「売却益」が大きく計上され、課税額が大きくなりがちです。
相続した不動産など、売買に関する書類が見つけにくいケースもあると思いますが、購入額がわかる書類をできる限り探してみましょう。
売買契約書でなくても、通帳の記録などで確認できれば認められる場合もあるので、購入額が証明できる書類を探した上で税務署に相談してみてください。
売却のタイミングを検討する
最終的に手元に残るお金を最大化するためには、売却のタイミングに注意が必要です。
売却のタイミングを検討するときには、次の3つのポイントを総合的に検討しましょう。
〈3つのポイント〉
- 各種の税金の特例を利用するための売却の期限がある
- 所有期間が5年を超えると税率が下がる
- 現在の不動産市況は好調なので高く売りやすいタイミングであること
節税できる制度はもれなく使う
節税できる様々な制度があるので、当てはまりそうな場合は税務署や税理士に相談してもれなく使いましょう。
売却益が出た場合だけでなく、損失が出た場合に使える制度もあります。
損失が出た場合でも、あきらめずに節税する方向で動いてください。
〈節税につながる5つの制度〉
- 3,000万円の特別控除
- マイホームを売った時の軽減税率の特例
- 特定の居住用財産の買換え等の場合の長期譲渡所得の課税の特例
- 被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除制度の特例
- 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
詳細については次の章で紹介していきます。
節税の制度は様々ですが、節税のポイントを押さえた不動産売却をしたい場合は、お気軽にご相談ください。
提携の税理士や司法書士のご紹介もできます。
売却益が出た場合の5つの節税制度
売却益が出たときに使える「5つの節税制度」をご紹介します。参考にしてください。
売却益が出た場合に使える特例制度はいくつかありますが、それぞれ使うためには一定の要件があるので注意しましょう。
詳しくは、国税庁のHPをご参照ください。
①3,000万円の特別控除
マイホームを売却した場合に、一定の要件に当てはまれば売却益から3,000万円まで控除できる制度です。
買換えの場合、「3,000万円の特別控除」と「住宅ローン控除」は併用できないのが原則なので、どちらを使ったほうが有利になるか検討する必要があります。
参考▶︎国税庁:3,000万円の特別控除
②マイホームを売った時の軽減税率の特例
10年以上所有していたマイホームを売却した場合に、一定の要件に当てはまれば、軽減税率が適用されます。
上記の「3,000万円の特別控除」の特例と重ねて受けることができます。
③特定の居住用財産の買換え等の場合の長期譲渡所得の課税の特例
10年以上所有するマイホームの買い替えで使える制度です。
非課税となるわけではありませんが、課税を将来に繰り延べることができます。
参考▶︎国税庁:特定の居住用財産の買換え等の場合の長期譲渡所得の課税の特例
④被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除制度の特例
亡くなった人のマイホーム(マンションを除く)を相続によって取得して売却した場合に、定の要件に当てはまれば、売却益から3,000万円まで控除できます。
※2023年12月31日までの期間限定の制度です。
参考▶︎国税庁:被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除制度の特例
⑤相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
相続税を支払った場合に、相続税額のうち一定金額を取得費用に加算できる制度です。
ということで、5つの特例を紹介しましたが、併用できない制度もあるので、どれを使うのが有利なのか迷った場合には税務署・税理士に相談しましょう。
売却損が出た場合の2つの節税制度
不動産売却で、売却損が出てしまった場合も、条件に当てはまれば節税制度を利用することができます。
「売却損が出てしまった時の2つの節税制度」についてご紹介しますので、参考にしてください。
マイホームの買換えで損失が出た時の節税制度
不動産売却で売却損が出たときは、確定申告を行うことで、給与所得等に課税された税金が戻ってきます。
買換えで損失が出てしまった場合は「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を利用しましょう。
ただし、特例を利用するための条件が細かく設定されています。自分の不動産売却が特例利用可能か、条件を確認してください。
「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の条件(一部抜粋)
- 自分が住んでいるマイホームを売りに出した
- 新居が日本国内で床面積が50㎡以上である
- 譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超える資産である
- 新居に翌年の12月31日までに住むこと
- 新居に償還期間10年以上の住宅ローンがあること
他にも、災害にあってしまった住宅、住まなくなった住宅など、様々なケースを想定した条件が設定されています。
特例を適用できる条件の詳細は、国税庁のサイトをご確認ください。
住宅ローンが残っているマイホームを売却して損失が出たときの節税制度
マイホームの住宅ローンが残っている状態で買い替えを行い、損失が出た場合の特例もあります。
「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を利用しましょう。
売却損の確定申告は義務ではありませんが、要件に該当する場合は制度を活用してください。
「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」の条件(一部抜粋)
- 自分が住んでいるマイホームの売却であること
- 住宅ローンの残高を下回る価格での売却
- 譲渡の年の1月1日における所有期間が5年を超えるマイホーム
- 日本国内にあるものの譲渡
- 売却前日に、償還期間10年以上の住宅ローンの残高がある
他にも様々な条件があります。詳細は国税庁のページで確認してください。
国税庁:住宅ローンが残っているマイホームを売却して損失が出たとき
不動産売却に関する税金のまとめ
いかがでしたでしょうか。
不動産売却で発生する税金のうち、一番注意したいのは、利益が出たときにかかる「所得税」「住民税」です。
その他の「印紙税」や「登録免許税」は比較的少額です。
所得税・住民税(復興特別所得税含む)の税率は、所有期間が
- 5年以下なら39.63%
- 5年超なら20.315%
です。
利益がたくさん出ると、税金は高額になる可能性がありますが、一定の要件を満たしたマイホームを売る場合には利益のうち3,000万円まで非課税になります。
節税するために大切なことは、次の3つです。
- 購入額がわかる書類を探すこと
- 節税できる制度をもれなく使うこと
- 売却のタイミングを検討すること
最終的な手取り金額を増やすには、税金を考慮しながら高く売る必要があります。
そういった部分も相談しながら、あなたにとってベストな売却を進めていきましょう。
最後までご覧いただきありがとうございました。
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